自然栽培 辻農園

自然に生きる 

 能登地方の50年ほど前の農作業は、手作業が大部分でした。農繁期は一家総出で、朝一番から暗くなるまでの労働でした。雪が解けると、田起こしが始まりましたが、牛が鋤を引いておりました。田植えは、何人もの女性が並んで植えておりました。農家の人たちは、朝から晩まで草取りをしておりました。稲刈りも、何人もの女性が並んで刈っておりました。田圃の周りの生き物もたくさんいました。蛙、蛭、ザリガニ、タニシ、カワニナ、どじょう、あめんぼ、ゲンゴロウ・・・
 現在はほとんど農機が作業します。除草剤のおかげで草取りも必要ありません。田植えも稲刈りも運転手一人で行っております。田圃の周りの生き物も蛙ぐらいしかいません。たぶん何千年と続いた農作業の風景が、この50年で一変したと思います。
 人間の叡智は、人間をより快適にしてきました。きつい労働は機械が代行し、冬は暖かく、夏は涼しい快適な住宅に住むようになりました。昔は季節季節にしか食べられない食品が、年中食べられるようになりました。
 すべての生き物は自然の中で生かされています。人間も例外でありません。人間は自然界の頂点に立っているかも知れません。しかし、人間に都合のよい所だけを横取りし続けることは許されません。人間の奢りはいつかしっぺ返しされます。
 自然界の中で生きていくことは自然と共存し、自然とギブ&テイクしながら、また自ら汗を流し働くことと思います。50年昔に戻る必要はありませんが、孫子の時代も心豊かに、そして安心して暮らせる世の中にしていくには、自然に感謝しつつ、自然の持つ力の範囲内で利用させて頂くことが大事でないでしょうか。