455.おちょかの池とカワウソ
川田 守山 裕美子
おちょか(落人の塚だといっている)に畑をしとった。そこに溜池があるが、泥深い池で、そこにカワウソがおるちゅう話やった。在所の中にある塚やわいね。
たまたま酔っ払いがおって、ふらふらとそこを通ったら、目の前に川がざあざあ流れておって通られなんだと。そしたら家のもんな心配して「どこへ行ったのやら、あの呑んべいが」と思って探いとってもわからなんだげと。その本人も一歩足を出すと川へ落ちそうで、そこをふらふらしているうちに眠ってしまったらしい。目や覚めたらあたりが白んできて、そこに道があったと。なんで自分がそんなことしとるげやわからんげと。そんなもんなカワウソにばかされたげわいやということになった。
ところがあるとき、ちやんとした人がまたそこを通ったげて、ほしたらその人も動かれんがになってしもうて、足が一歩も前へ出んげて、その人はそこに座り込んでしもたと。そしてまてまてと思うて、キセルに火をつけてタバコを一服吸うとったら、なんとなく体が軽くなったと。正気に戻ったげろね。カワウソは火に恐ろして逃げたげろ。うちの婆ちやんが言ってくれた。おらちも学校帰りには、そこを走ってきた。