450.狐の嫁どり

廿九日    亀野  ヨシ子

  徳田の種畜場の山から、新四郎山へ渡るぎゃがいね。白馬の祭りに行ってきたぎいね。夜二人でごちそうを下げてきたらね、"コン"ちゅうて鳴くぎゃがいね。そしたら新四郎山にも"コン"て嶋くぎゃいね。
  今から嫁入りするぞという合図やったぎね。そしたら二人して、「こりや、ごちそう持っとるし危ないなあ」ちゅうて、そこにすくんどったぎ。そしたら 六匹か七匹か数えきれんほど 尻尾に提灯つけて行くが見えるぎ。チラリ チラリと見えるぎ。列つくってね。
  こんどは、向山の狐の婿の方から"カッカ"ちゅうて鳴くぎゃいね。おらっちゃ一生懸命見とったぎね。
  婿さんの方へ着いたころかね、なんとも言えん、説明できんがに鳴くぎゃいね。そして一声でかいがにまた"カン"と高い声に鳴いたわね。狐は一杯灯りをつけているが、まっすぐに歩かんぎね、あっちへゆらり、こっちへゆらりとゆれながら、だんだん山の方へ消えて行ったわいね。