446.狐の尻尾ふり

川田    守山  裕美子

  狐は尻尾を立てて右へやったり、左へやったりして人をだますげと。尻尾を左へやれば人も左へだらり、右へやれば右へふらりとたぷらかされるげと。そして人を眠らしてしもうげと。
  昔の狐はでかいもんやったと。あるとき土提に草を刈っとった父ちゃんが、急に立ち上がって、あっちへふらふら、こっちへふらふらしとるげて、あの父ちゃん何しとるげと見とった。あんまり不思議やった。ちょつと離れた所にでかい狐が土提に座って尻尾を立ててあっちへやり、こっちへやりして振っていたげと。狐の尻尾振るのがこわいげと。婆ちゃん言うとった。

(参考)

狐の俗信

(鹿島郡誌より)

  狐の巧みに化け種々の方法を以て人を化かすとは一般に信ぜらるる所なるが、化かされしものは狐の尾の振り方によりて右往左往すといわる。