444.火玉と山鳥

新庄    百海  祐二

  昔、夏に入って稲の穂の出がけ時分、田んぽへ水をひっかけるがに夜水引きをしたもんや。そんな時、火玉が出るという話をよう聞いたわい。それあ、暗がりの畦道で足元を照らした灯かりながか、他人様に夜水引きに来させんがに脅かすため、ぽっと布に油をしませて火をつけ、針金の先にぶらさげてひゅうとふったがかね。そうやけど、それと似たがで、山鳥と言うもんなおった。
  おらの見た山鳥あ、新庄の八幡神社の森で、日の暮れ時分、なんて言うかなあ、お月さんのように光り、正体は判らんげけど、翔ぶと雲の波紋のように光りが尾を引くげ。
  雨のしとしと降る晩、燐が燃えるが見たことがあるが、山鳥ぁ、そんながと違うて、怪しげやけど美しいもんやぞ。

(類話)

新庄    笹田 勇    水野  外二