437.天狗と笛

瀬戸    島田  すず子

  おっちゃちの向いに昔でかいタブの木があってね。
  その木に天狗様おったったぎと。そして、夜中の十二時か一時ころになるときまって、「ピーヒョロ、ピーヒョロ」て笛を吹いてねと。ありや、はやそんな時間かいやと思うほど決まった時間になると鳴ったね。そやけど人気がすると笛の音も消えた。
  そのタブの木も、おっちや子供のときに切ってしもて横たわっとったわいね。