435.天狗と酒

川田    守山  歌子

  うちの露地の隅にでかいタブの木があったが、そこに天狗が住んどったと聞いた。天狗が酒を大好きやもんで、酒飲むがにそこにおったげろ。むかし造り酒屋で二宮の水で酒造ったと。越中まで川田の伝四郎の酒がうまいといって、評判で売れたちゅう話や。天狗まで酒飲みに来たという。そやもんでタブの木のそばへ行くなと言われたし、行くとはちがあたると言われた。物盗りなどくると天狗が笛を吹いて、うちのもんに知らせてくれたと。