413.曳山とけんか

一青    鳥畑 茂三

  良川の観音様の御開張と宮様の新築で曳山をやったが、この年は日照りが続いてひどい年やった。みんな田んぽへ日や入ってしもた。今なら曳山などは引けんが、ほんでも村同志の仁義苦界で、どんだけ我が在所の田んぼがわやくになっとつても山車を引っ張って行った。ひどい暑い年やった。
  良川について杉野の前で一服しとったら、一青といさかいせんならんといって、上村が先に来て待っとるという情報が入ってきた。そりや面白いじゃといっていきり立った。
  責任者が先に寄って、曳山の入る順序を決めとるけど、それをこわすげちゃ。そこからけんが始まるわけや。
  一青の宮が建って曳山が寄ったときでも、徳前と良川とやった。ほんなとき地元の若衆は見とるだけや。もう駐在所や大変やちゃ。かしこい巡査おって、白墨でけんかしとるやつの法被の後に○印をつけた。それで後からでもわかるげちゃ。ひどいときには留置所へ一晩行ってくる者さえでた。
  上村の宮が建ったときには良川と久江とやった。久江はとうとう負けて曳山を宮へ上げられで下においといた。良川はでかいわいね。沖、地頭、仲村、新町と四つもあって、固まったもんじゃさかい。そして引いとる山車の下へ油まいて火つけるけさかい、ひどいげったわいね。守田善右ェ門などは曳山の神様みたいなもんやった。