402.縫い物の話

瀬戸    池島 つや

  縫い物を習った娘が居ったぎと。そしたら親が、おっちゃ娘ぁどんなもんでも縫うちゅうて、自慢して嫁に行ったと。そしたら嫁にいくなり、お父との綿の絆纏を縫うてくれちゅうたぎと。そしたら縫われんというし、胴衣を縫うてくれちゅうたら、それも縫うたことあないちゅうたと。ほんならももひき縫うてくれちゅうたら、そんなもんななおさら縫うたことあないちゅうたと。
  そしたら、振袖や紋付やそんなもんな百姓にや一代に一遍いるかいらんかのもんや。我々にや毎日着んならん絆纏やももひきや、チャハンみたいなもん纏われんような嫁ぁ、いらんもんやちゅうて出されてしもたと。