394.運とあたわり

末坂    坂井 久松

  昔仲人しとった人から聞いた話やがね。「おっちや兄んさにどっか嫁を世話してくれ」とあっちからも、こっちからも頼まれとったといね。そして一人嫁さん連れて来たげと。そして、頼まれとる家へ入ろうとしたら、一人先に入ってみんなよばれとるげ。ほしたら、連れて来た仲人の婆ちゃんは弱ってもて、これは弱ったなあ、どうしようかなあと思ったが、それがまあ、来た嫁にしてみりゃ、どこのうちへ来たけやらわからん、ただ仲人についてきただけやさかい。婆さまも、これではどうもこうもならんもんで「そこでまあ、一服しとってくれ、おらいま起いてくっさかい」といって自分の家へ入れて待たせておいたと。
  そこで、どこへ行こうかなあ、あっちのうちも頼まれとっし、こっちのうちからも頼まれとったので、この家へ入って起いたら、今都合が悪いとか、何か言って受付けなんだ。こりゃ、どうしようかなあと思って、また他に頼まれとる家へ行って、「ほりや、起きや起きや」と言って起いた。親どもは「何言うとるがい婆々」「何言うとるがいて、おりや嫁連れてきて、家においたるぎゃい、早よ起きんかいや」「あー、ほか、ほか」そして第三のうちへ嫁入りさしたと。
  そのうちや、今どうなっとるちゅうたら、いいうちになって住んどるげちゃ。親子ともに立派にやっとるけちゃ。それから、一足先にすまいた第一のうちは、家もつぶれてないがになってしもた。その仲人の婆ちゃんは「人ちゅうもんな、一足違いでこんなことになるげちゃ、運やわいね。あたわりやわいね。人ぁみんな因縁かずいとるげわいね」と。