389.高野山焼串のある魚

良川     千場  つき

  高野山に弘法大師様のいらっしやるころのことや。そのころは坊さんは女房を持つことも、魚を食べることもできなんだぎい。
  そやけど弘法大師様はひらけた人やもんで、ウグイみたいなもんなおったといね。そしたら誰か来て、これを焼いて食べりやおいしいていうたもんで、殺生はやあけれど、娑婆に居る間人の命は取られんけれど、そこにおった者んな、じょって焼いて食わしてくれたぎいと「あー、まいもんや、こりやーこれをどうするぎや」ちゅうたら、こういううまいもんな絶えんがにして、焼いてでも泳いで、殺生せんでも食べられるがに、魚串に焼いたがをもう一遍川へ放り込んだったぎい。
  そして弘法大師様はああいう神通カのあるお方やもんで、合掌して析ったら、泳いだぎいと。その魚、今も居ると。そういう伝説のある魚が高野山におるぎや。