381.苅萱と石動丸
良川 山本 いと
花見桜で宴をやっとっときに、桜の花ビラが、ヒラヒうと大盃の中へ落ちたぎ。そしたら苅萱が悟ったぎ。それから妻と息子の石動丸をおいて高野山へ上って修業した。
石動丸は母親に育てられていたが、父親が高野山におってやもんで、一目父親に会いたいと母親に連れられて高野山へ向かった。今こさ高野山へ誰でも上れるけど、そのころはひどかった。母親がけわしい道を石動丸を連れて行ったがや。そして女人堂があるが、そこから先は女が上られなんだので、石動丸はけわしい道を一人で手棒をついて上っていった。父親に会いたいばっかりに、大勢修業しておられる坊様方に、私のお父さんでないかと間うても、みんな違うと言われる。間うては間うては、一の橋と極楽橋の所まできたら、そこにお父さんがおったといね。そやれど、おら父親やと名乗ってくれんじやったぎ。ほやれども、物の言いざまから、今まで出会った人からみりゃ、どことなく違うもんで、お父さんでないかというけれども違うちゅうし、しまいに石動丸の着物の袖と、父親の着物の袖とがまるかって放れなんだと。石動丸と苅萱は、口には言わないまでも、親子の契りちゅうもんなそういうひどいもんやちゅうわいね
そして、来るか来るかと思って待っとった母親が、熱をだいて寝とったが、石動丸が戻ってきたころには、もう死んでしもとったぎと。
(類話)
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