377.刀鍛冶五郎正宗

良川    千場  つき

  五郎正宗あ刀工の息子なげぇけれど、継母にいじめられ、鍛冶屋の下働きばっかりさせられて、鍛冶場へなかなか入れてもらえなんだげと。
  毎日、一生懸命に鍛冶仕事の手伝いをするがに、鍛冶場を見ることさえできず、戸をちょっこり開けて、トッテンカン、トッテンカンて打っておるがを覗こうもんなら、ぼわれて、ぼわれて叱られたげぇと。
  継母も刀鍛冶にさせんとことしたがかね。
  そうやけど、名刀を打ちたい一念で、泣いて頼み修業を続け、かなか立派な刀を打てなんだけど、やがて一念が通じ、名刀をるようになったげぇと。
  継母へのつらい思いが、刀に乗り移っておるがか、その刀をと、千人の血を吸わにゃおさまらんちゅうがいね。真心がこもおるがかね、切れるわ、切れるわ、一振り抜いだら大騒動や。
  そうやさかえ、なかなか抜けなんだちゅう話や。