376.養老の滝

良川     千場  つき

  昔、美濃の国に樵のお爺と孝行息子がいて、養老の滝を越えて、木を伐り暮らしを立てておったげぇと。
  その内、お爺ぁ病いで寝込んでしまい、息子ぁ一人で樵をするげけれど、お爺の世話をせんならんし、稼ぎが少なくなり、薬を買う銭にも事欠くようになったと。
  そうやけど、せめてお爺に酒一合飲ませてやりたいなと思い、老の滝の付近を通ると、ぷーんと酒の匂いがして、その滝水を、持ち帰って、お爺に飲ませるとまいまいて喜んでくれたと。
  孝行息子が汲むと、清水が酒になり、老をいたわり養うというわけかいね。
  それが今が日、養老の滝へ行くと、瓢箪に清水を入れ土産にいるわ。