375.殿様と加賀の千代
黒氏 平野 すず子
前田の殿様が、加賀の千代に言うたった言葉がどんなげちゅうと、千代がまことに器量の悪い者やったもんで、「千代や、世間の人がお前を、鬼瓦やちゅうとるがいや」と言うたと。そしたら千代が殿様に、「世間の人が、そんなに私のことを、みっともないと言うとるかいね」と言うたら、殿様が「鬼瓦みたいな者を、よう眺めてくれる者が居る」と世間の話をした。千代が殿様に言葉をかえした。
鬼瓦 天守閣をば 下に見る
という俳句にして答えたといね。殿様は感心して「千代、わしや参った」と言われたといね。