373.うちわの糊と加賀の千代

黒氏    平野  すず子

  仲の悪い家族が居って、加賀の千代のところへ相談に行ったぎとい。
「どうしたらよかろうや」ちゅうたら、加賀の千代が、うちわにたとえて言うたぎとい。
「うちわを貸してくれ」と言うて、うちわを持ってきてもらった。うちわがパタバタ、パタバタちゅうて、家の中の家族も、このうちわみたいなもんや。
  良いうちわ 糊がきいて がたつきもせず
でうたったと。そしたら、その意味がわからんもんで聞いたら、それは糊のきいとらんうちわやったら、さっきのうちわのようにパタバタバタとおもしろい音がするし、きちっと糊のきいたうちわやと、きれいな静かな音で、涼しい風になる。それと同じで、あんたの家のうちわの中の糊がきいとらんちゅうたとい。
  糊がきいとらんちゅうことは、すみずみまで意見がゆきとどいとらんちゅうことやね。だから、うちわ(内輪)がバタバタするぎといね。