369.石のない伊久留

廿九日    守山  なつい

  伊久留の在所はどこを歩いても、一つも石のない在所やわいね。
  昔、弘法様が歩いたったときに、西下と伊久留の境の所で、石にけつまづいて、足を怪我したったぎといね。そしたら弘法様ぁ怒って、吉田の在所へみんな石を投げたったぎといね。
  そしたら、吉田の在所ぁ、どんだけ他から砂を持ってきても石原になってもうぎといね。また、伊久留の在所ぁ、道がやわらこて、どんだけ石入れても、いつの間にかないがになってしもうぎといね。

(類話)

瀬戸    笹谷  よしい