360.姫    塚 (春木)

春木    小谷内  勝二

  大工がとても立派な仕事をするもんで、お前の言うことは何でもかなえてやると、その時の大官が言うたとい。そしたら、「あんたのお姫様が欲しい」て言うたがやと、何でもかなえてやるちゅうたもんで、ああ、なんちゅうへたなことを言うたと大官は思うたがやれども、やっぱりそれを実行しなければならず仕方なしに、娘も嫌や嫌や春木へ来たが、着くと間もなく自殺してしもたがで、姫塚にはその遺品や鏡など入っとるかどうやらちょっとわからんがね。

(付記)

(鹿島郡誌より)

姫君を葬った塚の由来の伝説。

  林照寺の境内にあり、小型の円墳で方四坪余り、周囲は今は田となれり。相伝えていうには当寺第二世順乗勤王につとめたことで、後醍醐天皇の皇女を坊守としてこの地へこられたが、葬うじられたのでその後遺体をここに葬り、これを姫塚という。