351.よりむき地蔵(良川)

良川    千場  つき

  良川にミッサちゅう娘と兵太ちゅうおっさまがおったぎとい。それがいつの日か恋仲になったぎと、そのミッサが地蔵様のお守りをまんでようするぎ。そして今なら恋愛ちゅうけど、二人は馴染になったぎと、いつの間にやら、ぽてりんと腹でかなったぎ。そやれど、母親の居らんミッサは家が貧してどうしっこともならんがで、ヤツハシちゅう機を織ってその日暮らしをしとるし、兵太ちゅうおっさまは、まことに財閥のぎやもんで一緒になられんぎや。ミッサは毎目地蔵様に花をたてて供養して、おっさまを思うとったれど、お腹が六ヵ月か七ヵ月になってから、にわかに死んだぎとい。
  そして葬式にひおいを担ついて、その地蔵様の前を通ろうとしたら、重たて動かれんがになったと。そのあげく、ひょいと軽くなったと。その時に地蔵様がミッサの方を振り向いたぎといね。今でも、その地蔵様がチョット横向いとってやわいね。