349.水の地蔵(羽坂)
羽坂 辻井 吉松
この「水の地蔵様」の前の池ぁ、おら中へ入って掃除したことがあるが、三間ほどの井戸やけど、昔、おらの親から聞いとるぎやれど、在所に夏やったが火事があったときに、その周辺の家の井戸水を手桶に汲んで運んだら、みんな枯れてしもうたぎと、そんならということで、地蔵様の井戸水を手送りで汲んだぎゃれど、どんだけ汲んでも水ぁつきなんだちゅうぎ。そんなあらたかな地蔵様やちゅうがや。
また、この水の地蔵さんのことを、薬師如来さんやと言うとっての人もおってやわいね。この地蔵さんもひどいがにすりへっとってやもんで、お姿がわかりにくいもんで薬壷などわかりにくいげわね。この井戸の水で目を洗うちゅうと目や治ったし、腹痛い者んなこれ呑めやよい方に向かうちゅうわいね。
(類話)
羽坂 打越 きくゐ・長屋 せつ