346.逢坂山のおんどさま(末坂)
末坂 山本 与作
末坂から花見月へ行く細い山道があるわいね。その峠あたりを逢坂の峰というげやが、ここにおんどさまがおってや。今こそ出仕事にでかけるもんがほとんどおらんが、昔、たき木を燃いとった時分なようたき木とりに通うたもんじゃ。百年もまだも前のことやろか、上坂さんの先祖の方が、在所の用事で花見月へ行ったげやが、この逢坂の峰あたりへきたときに突然オオカミに襲われ、今にも噛みつきそうになったとき、爺さんは「どうか、噛みつかんでくれ、大事な用事をもっとるげ。どうしても噛みつくなら用事を済まいて帰るときにしてくれ」とオオカミに言うたげと。オオカミは尻尾をたらしてどっかへ行ってしまったと。難を逃れた爺さんはやっとのことで用事を済まして帰り道、案の定、逢坂の峰へきたときにオオカミが現われ、爺ざんは噛みつかれて死んでしまったといね。村の人は爺さんを哀れんで、このおんどさまを建ててお祀りしたげと聞いとるわ。
(類話)
春木 小谷内 勝二・奥木 利作 花見月 北口 はる・北口 ひさの・北口 ことみ
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