345.吉崎の寺を建てた話

末坂    三野  喜美子

  お爺さんと娘さんと信仰の厚い人たちがおいでたがや、二人は吉崎の御坊の普請をするがに、いろいろと寄付金を集めとったがを盗まれたぎといね。
  そしたらどうしようもなあて、娘さんを身売りして、その金で吉崎の寺を建てたといね。娘さんな芸者になって年季が明けて家へ帰ってきたときには、結核になっとってもう治られんがになってしもうたもんで、ある日御坊さんに「自分の手技で死んでも極楽へ行かれるか」と間うたら、坊さんは「ああ、行かれる、行かれる」というてくれたったもんで、身投げして死なれたちゅう話や。