335.五輪谷と大門坂

末坂    山本  与作

 末坂のお宮さんを昔や観音さんというた。今は白山神社になっとるが、その横の五輪谷には、子供のころには五輪塔がようあった。

 だからむかし、お宮さんのところに観音堂があって、五輪谷には大きな真言のお寺があって栄えていたと聞いとるわいね。チョウべサの所を「蔵のこし」というとったさかい、寺の宝物かお経の蔵があったのではないか。また、小学校の辺を玄海山というとるが、玄海坊という、寺坊のあったとこやというし、五輪谷やお宮さんへ上がる道を大門坂と今も言うとるが、五輪谷を中心に一帯にたくさんの寺坊があって栄えていたのであろう。今は山になって木が植えられとるけども、ちょっと掘ると寺のもんな何でも出るわいね。

(参考)

(鹿島郡誌より)

末坂の中央より屑丈山に通づる坂道を大門坂といい五輪谷に入る。 五輪谷は眉丈山麓に於ける一丘陵にして、もと大伽藍のありし所なりという。五輪谷に登る坂にあたり、藤蔓を以て蔽われたる古塚あり、金塚と呼ぶ、これは村民某の一夜に九億八千万貫の金銀を埋めありとの神夢を得たるにより称せられしなりと。