328.法泉寺の経文軸

黒氏    平野  晶平

  半四郎さの先祖の話やが、寝ているといつも夢枕に仏さんが立って「半四郎や、半四郎や」と呼ばれるがやと。それがあんまり呼ばれるもんだから、「何でございますか」と聞いたら、「おら法泉寺へ行きたいけ」とこう言われたと。そんでもと思うてはなれの戸を開けてみたら仏さんの巻物が置いてあったげと。この巻物を法泉寺へもって行けと言うていたがにちがいない。今もこの巻物が本堂にかけてあるが経文の掛軸ながや。
  半四郎さんは大工やったが、おっちゃうちが法泉寺の本家やとも言うとった。
  この経文は盆の十五日のお朝事に読まれ、一年に一回、このときだけ読まれるが、もう真っ黒になっていて何を書いてあるかわからないくらいや。