320.ごうのきさま

良川   千場  つき

  良川の祭りはゴウノキサマ(ゴンロクサマ)ちゅうところへ一番先に御輿が行ってのぎい。今が日ね、そして、良川の在所には新町、仲村、地頭、早稲田、沖と五つあったがや。それがひととおり五回お祭りを済ますと、また、くじを引くぎいといね。そして祭りを続けとるがや。
  ゴウノキ様はあれは不動様やて。ゴウノキ様の場所は良川の新町にあるぎい。良川の祭りはゴウノキ様へ行かにゃ祭りをできんがになっとるぎい。
  良川の組頭の五人か十人かの頭が寄ってお祭りをするがについて御輿の回り順を、ある年の四月十八日の祭りの後に決めたといね。そして来年から、別にゴウノキ様を一番先に行かんでもいいがでないかて決めたら、その五月十四日の七尾の山車の日がみんな仕事が休みやったぎいと、その日が良川の大火のそれやがいね。
  良川のその大火が、祭りのことを一番先に言い出したが地頭の人やったがかねぇ、地頭が先に燃えて、その飛び火が五軒も三軒もとんでは燃えたぎゃと。そして、西馬場の口まで火がとんでちょっこしだけこがいたぎゃれど、また、その火が戻ってきたぎい。
  そやもんで、今が日、祭りは一番先にゴウノキ様へ来ることになっとるぎい。