317.神子石と放失神事

良川    畑  文太郎

  平国祭で良川の白比古神社から沖へ行って、お帰りのとき神子石"のところでお祭りがあるので、地頭の人はここでお祭りをする。
  その時、神主が矢を放つわいね。その矢を放つ意味は、昔、大穴牟遅命(おおなむちのみこと)がここをずっと巡られ、賊を平らげられているときに、命に子供ができた。しかし子供を連れて平定に巡ることができんもんで、子供をここにおいて"神子石"にどうかいつまでも子供を守ってくれといわれたといね。しかし子供は命の後を追うので「こんでついてこれんげぞ」といって、子供に向かって矢を放たれたげと。それが神事としてずっと続いている。その放した矢をみんな競うて拾いにいくわね。拾うた人は家の宝としとるし、その人は気多大社の大祭に招待を受ける。拾いに行くのはみんな女の子や。拾った子はよい縁に結ばれるというわいね。
  良川の白比古神社は、ここにおいていかれた子供で、その名を白比古神というて、良川の鎮守の神となっている。

「類話」

平国祭の放矢を拾う

良川    山本  いと

  むかし、良川の免田に森があったがで、そこに神様をお祀りしてあったぎわいね。その神様は女神様やったそや。そこで一の宮の神様が、免田の女神様のとこへ通うて子供ができたぎと。その女神様に恋文をつけて放ったげと。神子石ちゅうがあるが、そりや一の宮の神様の腰掛け石ながで、平国祭のときやそこにお祭りをしてから馬場へ渡ってやわね。
  この祭りのときに矢を放ってやが、その矢を拾うた者に気多大社のお祭りに招待があるがで、矢を拾うた女の人は、いい婿さんに巡り合えるということやわいね。そやもんで、結婚前の女の子が矢を拾うがに走っていくわいね。