262.尼僧の宿

良川    千場  つき

  むかし、旅人が道に迷って行く所がないもんで、どうすることもならんがになってよわっとったら、遠くにかすかな光が見えるもんで、そこへ行ったら尼寺やったとい。
  そこで一晩泊めてくれちゅうたら、こんな古い寺でも良かったら泊まってくれちゅうがになったぎとい。
  その寺には尼様が三人おるぎとい。そして
「わたしらは、何事も節約のために、三人いっしょに風呂に入っとるぎやが、山伏さんもいっしょに入りませんか」と言うたとい。おお、こりゃ泊めてもらった上に、尼様といっしょに風呂へ入るがか、嬉しやと思うて裸になったぎとい。そしたら、尼さまらっちゃ、三つの年から尼寺へあずけられて、男ちゅうもんを知らなんだぎとい。そしたら、その客あ前に、でっかい道具あ下っとったぎい。三人の尼様びっくりして、
「山伏さん。その前に重たそうに下っとるもんな、なんですか」ちゅうて問うたぎ、そしたら山伏は、
「これか、これは君達のような者のエントツを掃除する道具や」と言うたとい。そして
「所望とあらば、進んぜようか」とおもおもしく言うたぎい。
  尼様らっちゃ、私ら一ぺんも掃除したことあないがどうする、ついでにしてもろか、ちゅうがになって、
「ほんなら頼む」と言うことになったという話や。