261.本土寺の仁王様

良川    千場  つき

  本土寺の仁王様へ、ちいび(中風)になった爺さんを連れてってね、紙を噛んで、その噛んだ紙玉を、仁王様にかつけて、仁王様にひっつくと、それが足にくっつけや足が達者になるし、頭にくっつけや、頭の病気が治るちゅうわいね。そやもんで婆は中風の爺をリヤカーに乗せてて、足の方をいただこうと思うて、馬場の本土寺様へ出かけたがや、新聞を大事にもって、大門前のひどい坂をひいて上ったと。
  来たけども爺じや、ちいびやもんでいいがに新聞噛まれんもんで、婆ばそれを噛んでやっては、足が強よなるように、「足をためてかつけようぞ」ちゅうたら、爺じの手や振うもんで、いいがに当らんぎ、婆ばが噛んでやって、爺じやかっけとったら、面倒なことに真ん中の足に当ってしもたぎ、治ってほしい足に当たらんとって、面倒なことに真ん中の足に当ったら、早速きつうなってしもうて、さあそこで婆もどんこならんし、爺もどんこならんし、爺やはや家へ帰らんさきに、御守護をいただいて、足あ動かれんがに、モッコ、モッコと真ん中の足にカがついて、「婆弱ったわいや、弱ったわいや」ちゅうて爺じや泣くぎや。
  そんなもんなだちゃかんさかい、また行ってとってこんか、ちゅうがになって本土寺様へ戻ったれど、仁王様に婆ばも手が届かんし、爺も届かんし、新聞の噛んだがひっついとるがとられんわけや。
  そんで棒とってきたら、やっとこさいに届いたぎといね。そして爺やとるがにしたら、婆が「爺、ちょこしひっつけとかんせ、みんなとらんと、ちよこしひっつけとかんせ」ちゅうたとい。 婆が、爺より大分年や若かったげといね。