258.長い名の子

羽坂    岡野  武夫

  昔々、あるところに、年寄りの夫婦がおったと、長い間子供ができなんだが、それが年いってから、ひょこんと男の子ができたもんで、どんな名前にしたらよかろうかと、ほかの人に話し聞いたら、短い名前やと早よう死んでしもうけに、長い名前がいいがでないかというたと。そしたら「権平の、てきてき大高入道、播磨の別当焼山栄助そうろう」ちゅう名前をつけたがや、あるとき、その子が近所の川へ行って水遊びをしとっつたぎと、そしたら溺れたもんで、他の子が助けを呼びにきて、「権平のてきてき、大高入道播磨の・・・・ちゃんな溺れた」ちゅうて言うとる間に、本当に溺れて死んでしもうたぎと。
(大成638「長い名の子」・通観322「長い名の子供」)

(類話)

一青    北林  ふみ子

(付記)

長い名の子供

  ある夫婦に子供ができ「ちょん」という名をつけた。するとその子は早死にしてしまい、短い名がいけなかったのだろうと、次に生まれた子には和尚さんに頼んで「ジュゲムジュゲム、パイポウバイポウ、チュウリンガー、チュウリンガー、チウリンジジョギメの長助」などという長い名前をつけてもらう。
  その子は無事成長するが、ある時友だちと遊んでいて井戸に落ち、友だちが助けを求めてその子を呼んでいるうちに、名前が長すぎて時間がかかり死んでしまったという笑話。長い名前は元来導いものとされた。神々の名ほど長く讃えるもので祝福されるべきめでたい名であった。おもしろさの中心は長い名前の言葉としての口調で対句的表現になっているところにある。