254.鉈を借りても刃を欠かすな

新庄    亀井  ヨシイ

  あるうちに父とあ仏様にまいってお経あげとったといね。そんとき隣から
「鉈貸してくれ」と言うてきたと。うちに新しい鉈買うてきたがみとったげろね。そしたら、お経の代りに
「新しい鉈のことなれば、刃欠かしてはならぬぞ」というたと。お経は仲々おわらなかった。しびれを切らした隣の爺は鉈を借りることができないで帰って行ったといの。
(通観457「鉈なら寝た」)

(付記)

鉈なら寝た

  隣で餅を搗く音をたてとるので、爺が「やがてうちへぼた餅を持ってくるさ」と婆さんに言っていると、隣りから「寝たか」と言って爺が来て、「鉈を貸してくれ」と言う。爺は当てがはずれ、「鉈なら寝た」と言った。
(能登志賀P49)