250.星を落とす

末坂    三野  喜美子

  秋のきれいな星空の夜やった。ある兄んさまが「おーい、おらあの星を落とすさかい見にこいやー」ちゅたら子供たちが集まってきた
  長い竿の先に箒をつけて、庭先で一生懸命空をかき回わした。一人の子供が
「そんなことしたって星にとどかんわい」といったので、兄んさはこんどは屋根の上へ上って振りや落ちかもしれんというて、屋根へ上って振り回いたと、そんでも星は落ちてこない。子供はまだとどかんかいといったので、兄んさは大きい木に梯子をかけて登っててっぺんで竿を振り回いた。子供たちも星が落ちるか落ちるかと見とったら、ちようど流れ星がスーッと落ちていった。ソレーッと子供たちは村の森の方へ拾いに走っていった。
兄んさはにこにこして子供たちを見送った。
こんでけんけんぽっとくそ。
(大成576「星を落とす」)

(付記)

星を落とす

おろかな息子が竿で星を落とそうとする。父親が屋根へ上がれぱいいと教える。というのと、古兵衛というたいたずら者が、竿の先に箒をつけて、星を落としてやるから拾えと言い、流れ星が落ちたのを拾いに行かせる形式の二つの系列がある。