248.和尚が小僧を使うがでない
瀬戸 池島 つや
和尚様と毎日過すがに、小僧が一日に四十二回流し場に通うたと。
そやもんで小僧あ、なんちゅうこの和尚あ、おらばっかり使うと思うて腹立ったぎと、そしたら次の日に和尚さんが出かけんならんがになって、小僧に
「わしや、明日おらんさかいに、じっくり暮されるかやってみいや」ちゅうて、
「そやけど、御堂だけはちゃんとしとけ」と言うて出かけたと。
タ方和尚が戻ってきたら、小僧が「へーッ」ちゅうて頭を下げたと。和尚さんな
「なんじゃったい」と尋ねられたら、小僧が、
「和尚さんな、私を使うぎやと思うておったれども、和尚さんなおらなんだけども、四十二回位でない、四十五回も通うたわいね」ちゅうたとい。
和尚さんなおらんでも、自分のご飯こしらえもしんならんし、仏様へも参ったり、花を供えたりしんならんし、和尚さんのやっとった分まで、しんならんもんで、よけい回数が多くなったぎとい。
和尚が小僧を使うがでない自分のことのために働いとったちゅうことがわかったぎといね。