236.助平な父との嫉妬

良川    千場  つき

  むかし、あるところに助平な父とがおったと。自分な助平やもんで、母かまで浮気すっかと思うて、ちょっとどっかの父とと話しとっても、大そうどうやったぎと。
  ある日、父とあ出かけることになって、留守中に母か浮気するかと思うて、母かのあそこへ籾をつめて行ったぎとい。ところが母かは痛いやら、むずがゆいやらやもんで、どうもならんもんで籾をだいて、かわりに米を入れといたぎとい、そしたら父とが戻ってきて、母かのあそこを見たら、米あ入っとったもんで
「おどれあ、籾が米になるほど、男に使わしたがか」ちゅうて怒ったとい。
(大成374「鴬の谷渡り」)

(付記)

鴬の谷渡り

  嫁の滑稽な言動を題材とした笑話。「日本昔話集成」では愚人談、愚か嫁の項にある。
  行商人が、仕事に出る留守中、妻が浮気をしないように、陰所の右側にウグイスの絵(文字)を書く。旅から帰ってみるとその絵(文字)左側に移っている。大変怒って妻を間いつめると、妻は鴬の谷渡りということがあるという。
  妻の不貞をみるためにしたのであるが、妻が言葉でうまくいいのがれるという話。卑狸な内容になっていく。