235.子供のように
羽坂 辻井 吉松
母かがとんでもない力持ちやったとい。父とは、やせた小さなもんやったと。
ある晩、大変な風が吹いたと、そしたら母かが、こりゃ畑のなすびもいどかにゃ、木や折れてしもうじゃ、と思うて、子供をおんぶして夜なすびもぎに行ったぎ。
なすびもいどったら、背中におわれとった子供が
「じゃま、そりや種にするなすびやがい、もぐないやあ」ちゅうたもんで、でっかいじゃまびっくりして
「ボンやと思うとったら父とやったやったかいや」、怒って父とをその場に放りおとしたとい。
(通観373「子供のように」)
「類話」
でつかいじやま
黒氏 大塚 すず江
でっかいじゃあまがおってね、背中に子供を負うて畑へ行って、種蒔いとったち
「じゃあま、じゃあま、そりや、その種や違うがいや」ちゅうて、背中におって言うたとい。そしたら子供やと思うて負うて仕事しとったら父とやったとい。
「子供やと思うて負うとったら、父とかいや」ちゅうて放りおろしたとい。子供みたいに小さい父ととでっかいじゃあまやったといね。
(付記)
子供のように
五尺にも足りない小男と六尺近い大女の夫婦がいた。
女房が子供をおんぶして畑へなすびをもぎにいき、大きななすびがあったので女房がもごうとすると、背中の子供が
「それは種にするからもがずにおきなさい」と言う。女房は子供だと思っていたのが自分の夫だとわかり、怒って夫を背中から振り落とした。