231.三尺わらじ

末坂    三野  喜美子

  だらな兄んさと、だらなおじがおったと、二人でいっしょにわらじつくっとったと、居眠りしたり、よそ見したりしながらあんどったが、自分の手元をなんも見んと、兄んかはおじのするがをばっかりみとっし、おじは兄んかのするがを見ながら編んどったと。
「あのだら長い三尺わらじ作っとたがいや」と兄んか言うたと、おじや、
「兄んかのだら、われのわらじや三尺わらじゃがい」と。
  だらな兄弟が、居眠りとよそ見でした仕事は、こんな間しゃくにあわんもんやったと。
(大成393「三尺草鞋」・通観397「三尺わらじ」)

(付記)

三尺草鞋

  旦那が煙草が燃えきっているのも気づかず吸っている。それに気をとられている女房が袖口を縫ってしまい、女房を見ていた女中が飯を移しながら、おびつの外にあけ、草鞋を作っていた下男が女中の動作をみていたために長い長い草鞋ができてしまったという話。
  他人の失敗を見ていた者自身が失敗したのを次々に語るという笑話である。かつての農家の日常的な仕事を題材としながら、日常気をつけるべき教訓を語っている。