228.ドッツコイショ

羽坂    曽山  謙二

  だらな兄んさがよそのうちによばれて、うまい団子さ食べたぎと。そこで家へ戻ったらつくってもらおうと思うて、
「これや、なんちゅうもんやいね」ちゅうて聞いたぎとい。そしたら、
「これや、団子やがいね」と言うたもんで、戻り道わすれんとこぞいと思うて、道々
「団子、団子」ちゅうて歩いとったぎと。そしたら途中に江溝があったもんで、ドッコイショちゅうてまたいだぎと。そのひようしに団子ちゅうがを忘れてしもうて、ドッコイショ、ドッコイショちゅうて帰つてきて
「母あか、ドッコイショ作つてくれ」ちゅうたげと。母あは、何のこつちやわからんもんで、
「なんじゃわからん」ちゅうたところが、兄んさ怒つてなぐりつけたと。母あかが、
「そんなひどいことして、頭に団子あできたがいね」ちゅうたら、
「そうそう、団子のことやった」と言うたと。
(大成362A「団子婿」・通観272「物の名忘・団子婿」)

(類話)

瀬戸    笹谷  よしい

(付記)

団子婚

  愚か村話。「ドッコイショ」、話として採集したし、「買い物の名忘れ」としても採集した。
  ばか婿が嫁の里に行くと珍客が来たということで、姑が団子を作ってご馳走した。
  団子が大変おいしかったので、家に帰って女房に作らせようとして、名を忘れないように「団子」の名をとなえながら帰ってきた。小さい溝をとぶときに「ドッコイショ」と言ってとんだら、団子を忘れて「ドッコイショ」と言いながら家に戻って、女房にさっそく作らせようとしたが、女房は知らないと言う。
  怒った婿は女房にげんこつを入れた。額に大きなこぶができてしまった。女房は「団子のようなこぶができた」と言ったので団子の名を思いだしたという話。「物忘れ」話である。