222.鼻のない婿と髪のない嫁

大槻    豊蔵  茂

  むかし、鼻のない婿が髪の毛のない嫁をもろたげと。婿と嫁とが一緒に二人で火鉢にあたっとったと。
  婿が鼻がないのがやあもんで顔にろうに鼻をつくってくっつけてあったげと、そしたらろうが溶けて鼻がないがになってしもたげと。嫁さんが何にやと思ったれど、
「野山に花は数々あれど、顔に鼻のないのは見たことがない」と唄ったと。そしたら嫁さんがあいさつせんならんもんで、うつむいてあいさつしたら、いまのカズラとちがってあまかったもんで、うつむいたひょうしにカズラがポトンと落ちてしもたげちゃ。婿さんが、これこれ、まてまて何ちゅうことあるというわけや。
「村々に神や社が多けれど、神(髪)のないのは見たことない」と返し頂をうたったと。