221.あいさつ失敗

大槻    豊蔵  茂

  むかし昔、あるところにだらな兄んさがおったと。この兄んさ嫁もろうてうちあげに行かんならんがになったげと。そやけどあいさつの仕方を知らんもんで、婿が物知りのだんなのところへ行って
「おらうちあげに行かんならんが、どうあいさつしたらいいけ」と聞きに行ったと。だんなは
「この年になってあいさつすつこと知らんか」、
「ありがとうござんした」と言へとだんなが言うたと。
  嫁さのうちへ行って、上りもせんさきに
「ありがとうござんした」と言うたと。
(大成336B「婿の挨拶・粟薪型」・通観321「挨拶失敗」)

(付記)

婿の挨拶・粟薪型

  愚か婿が、嫁の里によばれに行くが挨拶の仕方を知らない。粟をまいている父親にきく。二十、三十にもなって扶拶の言葉も知らないかといいながら粟をまく。
  婿は嫁の里へ行って、粟をまくまねをする。