209.水鏡美人

末坂    三野  喜美子

  むかしむかし、あるところに、はじめて水鏡を見たもんがおって、おら美しいなあ、と思っておったぎ、きれいやな、きれいやなて言うておったとい。水に写っとる顔をみてほれぽれしとった。
  そんとき水しぶきがおきたら、変ながになったと。何んじゃ、おらの顔にしわがよったぞ。おかしいなあ、こないにあっちへ行ったり、こっちへ来たりするがかなと思うて見とった。少しずって水の澄んだところへ行ったら、またきれいな顔が写ったと、そこへチョボンと水滴が落ちたら、グ二ヤグ二ャの目も口も鼻もわからん顔になったと、おもしろいなちゅうて不思議がっとったと。