207.山家の男のけが

黒氏    平野  晶平

  ある山家の男が、山畑で仕事をしておったら鍬で足を切ったげと、そりや大そうどうやというて、里の村の医者へ運んだげと、医者はその傷をよう見て、
「ようし、わしの言うとおりすりや治る。こりや風呂へ入りゃ治る傷や」と言うたと。うちへ帰って風呂へ入って足をきれいに洗ったら治ったと。
  あかがたまって黒くおおわれておったがで、鍬であかだけが切れたがで、体まで鍬があたっとらなんだげと。