203.京の蛙と大阪の蛙

黒氏    平野  晶平

  京の蛙と大阪の蛙がおったと。京の蛙がいつも京ばかり見とるもんで大阪の町を見たいと思ったし、大阪の蛙が反対に京の都を見たいと思って互いに見物に出かけた。
  二人はちょうど山の峠に出会ったので立ち上がって見たら、「ヤーなんも京も大阪もかわらんな」と言ったと。お互い蛙の目が背中についとるもんで、立ち上がったときにや京の蛙は今きた京を、大阪の蛙は大阪を見とったげちや、蛙が自分の目が背中の方についとるが知らんもんで。
(大成308「京の蛙大阪の蛙」)

(付記)

京の蛙大阪の蛙

  一種の愚か者話で、蛙の生態的な目の付き方から作られた笑話。おどけ者、まぬけ者の風貌を持つ蛙が、ほほえましいこの話にぴったりである。
  京都の蛙は大阪を見物しよう、大阪の蛙は京都を見物しようと出かけ、二匹は国境いの山頂で出会う。それぞれ目的のところを眺めようと手を取りあって二本足で立ったのだが、京都の蛙は京都を見、大阪の蛙は大阪を見ることになる。京都も大阪も変わりはないと言って、二匹はそれぞれ元来た道を帰る。
  これは蛙たちの動物笑話であるが、人間関係におきかえてみると、人間のおろかさを物語っている寓話であるといえる。