141.猿の親子

良川     千場  つき

  お爺とお婆がおって、お爺あ猟師で、ある時親猿を鉄砲で射止め、まだ生きておったけど、両手両足をしばって、いん中(囲炉裏)のたかに吊りさげ、あした料理しようかなと、楽しみにしてその晩寝たげえと。
  ほしたら、夜が更けたころ、お爺あ物の気配で目がさめてあたりを見ると、どこから入いったか何匹もの子供猿が、親と子ながかな、吊ってある親猿の下へ寄って、その中のあんか猿がいん中の残り火をほじり出して、鉄砲でうたれた傷口へあて温めておったげえといね。ちんこい猿共あ。
  その様子を眺めたお爺あ、猿の親子の情に感心して、生きものにあ一寸の虫にも五分の魂があるげえ、殺生できんじゃと悟って、夜の明けるが待って、親猿を裏山へ放してやったげえと、ほして、ざんげして一代猟師やめたげえといね。