137.橋工事の人柱

末坂    三野  喜美子

  ある爺が、村を流れている大川の橋が大水で崩れてしもて、どんだけ杭を打ってもおちつかんで工事が進まない。どうするこうすると相談してもまとまらない。爺がもうこうなったら人間の柱の方が人の心がこもってよかろうと言うたげ。そやけども誰れも人柱になるという者がおらなんだ。川の中に杭を打ちこまにゃ橋がかからんし、とうとうこれを言い出した爺さんな人身御供として橋の生けにえになったといの。「維も鳴かずば撃たれまいに」なんでも自分からうかつに物言うもんでないぞと言われた。
(大成新46「長良の人柱」・通観82「アワタの橋杭」)

(付記)

アワタの橋杭

  毎年大水が出て橋も田畑もだいなしになるので、村人が集まって相談したとき、旦那が人柱を打つがいいと言うが、言い出した者が人柱になることになってしまう。何年かたって旦那の娘が嫁にいくとき、母親が、しゃべってならないとさとしたので、娘は婿家で一口もしゃべらず、そのために暇を出される。で男たちがかごをかついで家を出、休んでいるとき維が鳴き、鉄砲の音がすると、しゃべったことのない娘が、「わが父はアワタの橋の橋杭に、維も鳴かずはうたれまいものを」と歌い、わけを知った人々は娘を婿家へ連れて帰る。何事も先んじて言うもんじゃない。