134.食わず女房

一青    土木  ミスイ

  昔、けちな男がおって、飯を食べないで、糞をたくさんすっし、よく働く嫁をさがいとったとお。それを化けもんな聞いとって、嫁さんになってでてきて、「私しや飯食わんさかい、もろてほしい」と言うてやってきたと。
  そして、毎日仕事をするし、あんまり食べんもんで、男は喜んでいたが、あんまり食べんと仕事ばっかりするもんで、気味悪くなってきたと。
  ある日山へ行くふりをして、あまに上って見てみると、嫁は御飯を炊いておにぎりを作って、自分の髪の毛を広げて、そして、この頭の中へ放りこんどったがやと。嫁は大蛇だったので、男は恐しくなって、ひま出したげとお。
(大成244「食わず女房」 ・通観27「食わず女房・露見型」)

(類話)

大槻    山崎  幸子

(付記)

食わず女房

  山姥やクモを退治する厄難克服の逃鼠談。
  ある男が飯を食わぬ女房を求めている。飯を食わぬという女が訪れて来たので女房にする。飯を食わぬにしては米が減るので、男は出かけたふりをして、天井に登って見ていると、頭の穴に飯をほうり込んでいる。恐ろしくなった男は、仕事から帰ってきたふりをして女房に「暇を出す」と言う。正体を見られたことを知った女房は形見に大桶を作らせ、男を中に入れて山へかついで行く。男は木の枝につかまってのがれ、ショウブとヨモギの繁みに隠れる。女は山姥になって追っかけてくるが、男のいるところに近づくことができない。男は助かる。その日が五月五日で、魔除けとしてこの日にショウブとヨモギを軒にさす、あるいは頭に巻くようになったと語られている。
  木につかまって桶から逃がれた男は、山姥が「餌物を逃がしたから、今晩、クモになって取りに行く」と子供や仲間に話しているのを盗み聞きした。その晩、男の家の自在鈎から、クモが降りて来たのを捕まえて、囲炉裏の火で殺してしまう。という「夜クモは親に似ていても殺せ」のことわざと結びつけて語られる場合もある。