129.金の斧
黒氏 平野 すず子
昔、あるところに、正直な木こりの爺さんがおったがやと。あるとき、山の池のそばで木を伐っとったら、どうしたはずみやら、手がすべって、池の中へ斧を落してしもたがやと。そしたら木こりは困ってしもうて、すくんどったとお。
そしたら池の中から、きれいな女の人が現われて、
「爺さんが今落した斧、これでないかい」言うて金の斧を見せたとお。そしたら木挽は、正直やもんやさかい、
「おれのが、そんな立派な物でない」と言うたら、また女が
「そんなら探してきてやる」と言うて、また水の中へもぐっていって、こんだ銀の斧を持ってきてみせたと。木挽はまた、
「そんながでないげえ」ちゅうたら、また池の中へ入って、こんだ本当に落した斧を持ってきたと。そしたら木挽は、
「それこさ、おれのがや」と言うたら、女神様が、
「おまえは、なんちゅう正直もんや」と言って、金の斧も、銀の斧も、三つともおまえにやるいうて、女神様が池の中へ入っていってしもたがやと。
そしたら、隣りの悪い爺さま聞いたがやと。そっで、おれも行って来る言うて、山へ行って木を伐っとって、わざわざ斧を池の中へほうり投げたと。そしたら、美しい女が出て来るかなあと待っとったら、ほんまに出てきたとお。
「いま落したのが、これかい」というて金の斧をみせたら、
「おー、そいつや、そいつや」言うて、それをとろうとしたところが、その女が怒ってしもて、
「うそつきめ、何やっこともねえ」言うて池の中へもぐっていってしもたとお。
爺さまは、金の斧どころか、自分の斧さえもらわれんがになってしもたとお。
(大成226「黄金の斧」・通観126「金の斧」)
(付記)
金の斧
木挽が山の端で池の木を切っていて、斧を池に落してしまい、淵に探しに行くと美女が現われ、金の斧を見せる、違うと言うと銀の斧を見せ私のものでないと言うと、最後に自分のものを見せる、それだと言うと、金と銀の斧もくれる。正直が報われる。
隣りの爺がこれを知って行き、わざと斧を池に投げこむ。美女が現われ、金の斧を見せたので、これが自分のものだと言ってもらおうとする。嘘つきには何もやらないと言って池の中へ入ってしまい、爺は自分の斧さえ失う。貧欲が罰せられる。

