127.継子の水くみ

廿九日    守山  なつい

  継母が実の子をつれて遊びに行った、継子にはうちの留守番をさせ、その間に、篭で風呂に水をはっとけと言いつけていった。篭に水を入れたって、何んも入らない。それをそっとみていた坊さんはかわいそうに思って、自分の衣をぬいで、これをかごに敷かせて水をはらせたぎと。
(大成216「継子と鳥」 ・通観81「継子と鳥」)

(付記)

継子に水くみ

  父が三人の娘にお土産を約束して旅に出る。継母は継子たちをぎゃく待する(ざるで水を汲ませる)憎が現れて助ける。風呂を沸かさせて、その上に蓋を渡して渡らせ煮殺して埋める。父が帰える。と雀が三羽来て「父恋し、土産はいらぬ、継母はにくい」と鳴く。父が不思議に思ってその根を掘ってみると、三の子供の死体を発見する。継母は罰せられる。

「類話」1

泉の水汲みと苺とり

川田    守山  裕美子

  むかし昔、お母さんと一人の娘と前のお母さんが残して行った一人の女の子と三人で暮しとったぎいと、そしてある時、お母さんが冬の寒い日に前のお母さんの女の子に泉へ行って水を汲んで来いていうたぎいと。それで女の子は泉で水を汲んで帰り道にきれいな女の人が
「水を飲ませて下さい。水が飲みたくてたまりません」ていわれたので、女の子は
「いいですよどうぞ好きなだけ飲んで下さい」ていうて飲ませて上げて、女の子は又泉へ行って水を汲みなおして家へ帰ろうとすると、さき程のきれいな女の人がまだそこにおって
「さき程は有り難う、とてもおいしかった、お陰で助かりました。お礼にあなたが一言はなす毎に口から宝物や花が出るようにしてあげましよう」と言つて去って行ってしもたと。
  女の子はその事を別に気にも止めないで家へ帰って
「ただいま」ていうと口から小判だとか花だとか飛び出るぎい。
  そしたらそれを見た継母がびっくりして
「それはどうしたぎい」ていうぎい、そやもんで
「これこれで女の人に水をあげた」てゆうぎい、そうするとそのお母さんは自分の子供に次に水を汲みにやらせるぎいね。
  そしたら今度はヨボヨボのお婆さんが
「水を飲ませてくれ」ていうたら
「お婆さんなんかに水を上げられない、私はきれいな女の人に水を上げるぎい」ていうたぎいね。そしてきれいな女の人が居らなんだもんでそのまま家へ帰るぎいね。そしたら継母の女の子が一言しやべる度びに蛙とか蛇だとか虫だとかが飛び出るぎい。
  そうするとお母さんが大変腹をたてて前のお母さんの女の子を追い出すぎいね。そしたらその女の子がとほどほど森へ歩いて行くぎやあね。そして冬の寒い雪の中を有りそうもない苺を採って来いていわれてどうしようもなく歩いていると、冬なのにとても冬とは思われない春のような野原へ出るわけやね。
  そしてそこには鳥とかがさえづっていて、花がいっぱい咲いていて、継母が採って来いていわれた苺が沢山あってね。よろこんで取って帰ってお母さんにあげたといね。
「そんなにたくさんあるなら、わたしが今度行って取ってきてやる」と言って継母のお母さんが苺取りに行ったら、寒い吹雪の中、お母さんは凍えて死んでしもたと。
  そんでむかしから 継子いじめするもんじゃないて
(大成213「継子の苺拾い」・通観218「継子のいちごとり」)

「類話」2

継子と本子の兄弟

良川    千場  つき

継子の兄と本子の弟がおって、兄と弟は仲がよいぎやれど、母あかが、まるでわが子によてひきするがや、そやれど兄貫は、どんなときでも弟をだいじにするがや、母かがあんまり、兄貫をせめるもんで、弟が兄貴に申しわけのうて死んだぎ。
   羽坂、春木の六所の宮に
   弟こいしの鳥が鳴く
 ちゅう唄があるわ、それが兄貴が弟を弔うて唄うたちゅうがや、そして母かが、改心したがやと。
(大成207「お銀小銀」)