120.こぶとり爺

良川    千場  つき

  むかし昔、ほっべたにでっかいコブのあるお爺さんな居ったぎい。まことにやさしいお爺さんやったぎいね。他人にもまずまずやさしいお爺さんやったぎいと、そしたらお爺さんに助けられた狐がそのコブを取ってやろうかていうたといね
  狐がやさしい親切な爺さんにコブがじやまになろうさかいに取つてやろうと言ったら
「だんない、さほどじやまにならんさかいあんた手数のかかる事ならよろしいわいね」ていうたと、
「あんまり気の毒やさかい」ていうて狐がコブを取ってやったと。
  取ってもろうてそのお爺さんがでかいことお金をいただいたぎい。そしたらそれじゃ、あまりにももったいないちゅうて、なんか昔の事やさかい、そこに寺を建てたか宮を建てたかしらんけど建てて、その助けてくれた狐を一生拝んでお礼申しとったと。欲な爺じやごぶも無いがに金を欲しさに狐のとこへ行ったら、そのコブを悪い爺さんに二つもひっつけて取れんがにしてしもたと。
  そして狐あこぶとり爺さんに、毒虫に刺された時に唾を付けて、この木の葉っぱをつければどんな足の痛いがでも治るで、狐あ教えてやったぎいと。そしたらこぶとり爺さんなちよっとでも悪いちゅう人があったら治してやったぎいと。
  その葉っぱがどんなぎいちゅうたら、今でも山へ行くとこぶとり爺さんの習うたその葉っぱに八ちゅう字を書いてあるわいね、葉っばの中に黒いがに「八」てね。子供のころに「この葉に唾きを付けて貼れば治るぎやーなー」ちゅうて取ってあるいたもんや。
  これでへんけんぽってりこ、なめてみたらからかった。
(大成194「瘤取爺」・通観127「こぶとり爺」)

(付記)

こぶとり爺

  こぶのある二人の爺が山のほら穴の中に泊っていると、鬼が来て踊る。一人の爺が踊ると、おもしろいから明日も来いといってこぶを質にとる。他の爺を発見して踊らせるが、ふるえて踊ったので、下手だといってこぶをもう一つつけてやる。というのが一般のこぶとり爺の昔話であるが、干場つきの語るのが狐の恩返しの変形である。