118.花咲か爺

良川    千場  つき

  むかしあるところに、貧しいけど正直なお爺とお婆がいて、犬をなんとかわいがっておったげえと。
  ある時、犬がここ掘れワンワン、ここ掘れワンワンてなくもんでお爺あそこを掘ると、金銀の宝物が沢山出て金持ちになったと。
  それを聞いた隣の悪い爺あ、その犬を惜りて無理やりあっちこっち引張って歩いたけど、ここ掘れワンワンてなかんし宝も手に入らんもんで、腹を立て犬を殺してしもたと。
  お爺あ、悲しんで死んだ犬を丁重に弔らい、土まんじゅうの墓の上に、松の木を一本植え毎日のように水をやり供養していたら、じきの間に太った。その木で臼を作り餅を搗いたら、その餅が大判小判になったと。
  隣の悪い爺あ、それを見て、なんでもない犬を引張ってきて殺して、土に埋め松の木を植えておいたら、やっぱりじき太った。その木で臼を作り餅を搗いたら、臼の中から石や瓦かけらがいっぱい出ててきたそうや。
  ほうしたら、悪い爺あ、おどれこの臼あ、糞にもならんちゅうて臼を燃やしてしもうたげと。その時にいいお爺の臼も燃してしもうたげと。
  お爺あ、それを知って悲しいやら悔しいやらどんならんで、せめてその灰でもと思って、持って帰るがにしたら、風にばあっとたって、枯木にかかって花が咲いたげと。
  お爺あ喜んで、殿様が通られる時、道の辺りの枯木に上がり、
「枯木に花を咲かせましょう」と言うて、灰を蒔いたら、ばあと花が咲き殿様あ見事、見事と喜ばれ、ほうびを沢山貰うたそうや。
  大を殺した悪い爺あ、ほうびがきなるなって、一緒な格好で枯木に上がり、
「きれいに花を咲かせましょう」と、灰を蒔いたら花は咲かんと、灰あ殿様の目に入いったり、その辺中灰だらけになり、しばられてしもたと。
(大成190 「花咲爺」・通観47「犬むかし・花咲爺」)

(類話)

大槻    山崎  幸子

(付記)

花咲爺

  爺がわが子のようにかわいがっている大の霊がつぎつぎに力を発揮して爺に幸せをもたらす、隣の爺が真似をするが失敗する。爺の成功と隣の爺の失敗が交互にくりかえされて展開するという構成になっている。
  終りに、爺が臼の灰をまくと枯れ木に花が咲いて殿様からほうびをもらう。となりの爺がまくと灰が殿様の目に入って罰せられる。
  だから人まねをするものではないと語っている。