117.鉈が転がった

良川    千場  つき

  天気のよい日に、爺さんが山へ行ってたき木をつくっておったら、ひょつとしたひょうしに、鉈が手からはずれてしもうた。拾おうとしたら、ころころと穴の中へ落ちてってしもたげと、爺さんは、さかてんぽになって拾おうとさがしてもわからない。爺さんはしおれてしもて、家へ帰ろうと思うて、少し歩いとったら、そこへ山の神様が現われて、
「この鉈をおまえにやる。この木切りたいな、と思うて一ふりすれば、その木が切れる」というてくれたと。この働き者の爺さんは、しまいに木こりの親方になったげと。
  そしたら隣りの悪い爺さんは、穴もないがに鉈を転がいて、それから、鉈をふり回いておったら、人を殺いてもて、縛られたと。

(付記)

  「金の斧」の類語である。