116.閑所の屋根ふき

良川    千場  つき

  爺さんが、閑所の屋根ふいとったら、稲が三穂あったげいといね。そしたら爺さまいただいて それを婆さまと雑炊にして食べたと。そしたら屁がでたげちや、その尻がおもしろいぎ、
「シジュウカラカラ、チチンブイブイ、コガネザクザク」ちゅう尻がでたといね。あんまり面白いもんで、爺さんは婆さんにすすめられて、外へ売りに出たと。そしたら、あんまり面白いがにでるもんで、評判になって殿様の耳に入ったげと。
  殿様によばれて、お座敷で「おい、おい、おまえ、屁一つ放してみい」と言われたと。
「シジュウカラカラ、チチンブイブイ、コガネザクザク」と大きく出たので、殿様はおお喜び、たくさんのほうびをもらったと。
  ところが、それをきなるがった隣りの爺じがまねをして、閑所の屋根をふいたが、稲の穂がなんも出てこなんだけど、町じゅう
「庇を売ろうか、庇を売ろうか」と歩いたと。
  殿様に呼ばれて、座敷に庇をやろうとしたら、屁や出んと中昧が出てしもうて、縄にしばられて死刑におうたと。
(大成188「鳥爺」・通観23「鳥飲み爺・隣の爺型」)

(類話)

笹谷  よしい    羽板    打越  きくゐ    春木    小谷内  勝二

(付記)

鳥飲み爺  隣の爺型

  爺が便所の屋根をふいていると、藁の中から稲の穂が出てきたので婆に渡し、それで作った団子を弁当に持って山へ行く。
  弁当を木の枝につるして仕事をし、昼に見ると団子がなく木の下に雉の糞があったので、雉が団子を食べたと知り、その糞を食べると「チチーンブイブイ、コガネザクザク」と屁が出る。
  珍しいことだと急いで帰宅し、婆にわけを話して屁を聞かせ、婆も感心したので町へ屁を売りにいく。
  町で庇を売っていると殿様が通りかかり買うと言うので、爺が屁をすると同じように屁で歌い、わけを話すと殿様は、米を大事にしたから神様からその屁を授かったのだと言ってほうびをくれる。
  隣の爺がこれを知り、便所の屋根をふくが稲はなく、むりに団子を作らせて山へ行くと雉が食べて糞をしてあったので、それを食べるが、腹は鳴らない。
  それでも町へ屈を売りにいくと殿様が昨日の爺と思って屁を所望してくれるが、屁は出ずに糞が出たので打ち首になる。(幸運な男を愚かしくまねる)
(通観23 「鳥飲み爺」のモチーフ構成)